銭湯のテコ入れから見えてきた、これからの銭湯の立ち位置について

銭湯

苦しい時こそ次の一手を

気付けば早10月も半ば。
2020年はコロナにやられ、完全に失われた1年になりそうです。

3月頃から苦しい苦しいと言い続けて7ヶ月。
精神的な免疫がついた今、裏を返せばまたとないこのタイミングで次なる一手を打つことにしました。

銭湯の運営体制の見直し。
宿2号店が開店し、そっちに集中しなきゃいけなくなる前に銭湯の体制を整備です。

代替わりを意識した体制もあわせて整備すると、人を雇う必要があって、
つまりはお金が要るという事で。

さてさて 微減が続く銭湯の売上からどう捻出しようかなと。

銭湯って以下のような理由から家族経営だからこそ成り立っていた業態であります;

  1. 全体の75%が高齢者の常連客故、先行きが厳しい
  2. 県単位で定められた価格の上限設定により、単価アップが難しい
  3. ずーっと忙しいのではなく、細く長〜く拘束される仕事内容であるため、人を配置し辛い

①常連さんが徐々に減っていくことで日銭が減り、②付加価値提供による単価アップが難しいがために設備投資に回す長期的なお金も作り辛く、③若い戦力を雇おうにも対価として十分に支払えない仕事なために、後継不在の高齢家族がひっそり辛抱しながら経営を続ける、というのが大半の銭湯の実情・・



言うことはテコの原理がとても効きやすい。

どんなテコを入れるにもお金がかかります。
設備投資をするための原資を、人を雇い入れるための原資を得るため、燃料にテコ入れです。

銭湯経営のあれこれ - 燃料と人
家族での経営形態から脱却するためには。 銭湯には切り詰められない費用があります。 燃料費と人件費。  家族経営だからこそ無視できていた人件費をしっかりと計上するには、燃料費を切り詰めなければいけません。 でも、どうしたら?

太陽熱(太陽光発電じゃないよ)を利用してお湯を温める仕組を導入しました。

名古屋で銭湯を経営されている方とMMCさんに導入頂いたこの仕組み。屋根で井戸水が熱くなるんです、お日様の力で。

我家の銭湯は井戸水を灯油で温めており、この灯油代が経費の中で抜群に負担が重く、かつ、世界情勢に左右されるのは素敵じゃないなーと長年思っておりました。

初期投資はかかりますが、またとない資金調達環境が整っていたので話だけは詰めておいて、父名義で借金しました、また。(僕の与信枠は既に一杯だったので)

本格的な効果を確認できるのは1ヶ月分の灯油消費量を確認しないと分かりませんが、このプロジェクトを機に最近の関心事と合わせて銭湯の可能性を再確認したのであります。

銭湯はコミュニティ機能以外にも果たせる役割があるのかもしれない

元々の銭湯の役割って地域の衛生管理でした。
それが、人々にとってのサードプレイス的な位置付けとして最近は脚光を浴び、時代がようやく追いついた、なーんて思っておりました。(実際は何一つ変わることない銭湯に時代が一周回って追いついただけですが)

この動きを高齢者だけでなく、もっと幅広い世代に広めていくことが直近のチャレンジなんだろうけど、コミュニティ/サードプレイス機能以外でも銭湯が果たせる役割があるな、と最近考えています。

ちょっと飛躍します。

これからの社会(特に地方)で人々が所得を増やす事って、益々難しくなるのではないか。
多くの仕事 / お金はAI・ロボット・プラットホーム(大手資本)に吸い取られ、AI・ロボットを持つ者・持たない者、プラットホーム(大手資本)を持つ者 / 雇う者とプラットホームを使う者 / 雇われる者の間で持て得るお金の量(質は別)に大きな差が生じる。

とすると

地方では、多くのケースで後者になる。

人口不足で地域経済が停滞するからって外部から関係人口やら外国人労働者やらで補おうしても、それは住民の所得 / 幸福度を上げて地域経済を再興させるため、というよりは、既存の仕組みを見直す事なく続けるためにやらねば!って感じがするし、

じゃー女性の労働参加率を上げよう!と言ったところで完全雇用水準に近い状態では、女性すらも不足してて、

質だっ、付加価値の高い仕事をしていこう!って、分かっちゃいるけど何したら良いか分かんない。

人は減り、モノとカネと情報が握られた未来に、地方はどう生きていけば良いか、と。

そこで一案。

押してダメなら引いてみる

”増やす(上げる)”ことも大事だけれど、”減らす(下げる)”ことに知恵を絞ってはいかがかと。

”切り詰める”のではなく”減らす/下げる”。
次なる一手を打つために、”増やす/上げる”ために、その余地を増やす。

「銭湯」とすぐにでも実現したい「お惣菜屋」で例えると;

”減らせる”
・お風呂掃除に要する時間
・買物に行く時間・食事の支度・片付けの時間
・ガス代・水代
・ヒートショックにかかる健康リスク
・1人で過ごす寂しさ

増やす / 増やしたい
・あと1時間のお仕事時間
・家族と過ごす時間
・生活の余白
・健康寿命
・幸福度

もう少し踏み込んで
遠くない将来、屋根一面に太陽熱・電気パネルをもっと敷き詰めて、マイクログリッドの基点になりたいなと考える。

すると

追加で”減らせる
地域の電気代
地域の灯油代

高山市から灯油代として流出しているお金は年間24億円と言われてる。
銭湯によって24億円の0.00000001%でも削減できたら素敵だなと。
この仕組みを広げたら、流出するお金をもう少しだけ減らせるかもしれないなと。

コミュニティ内の可処分所得・時間を増やし、同時に地域の幸福度も上げられる、それが銭湯の可能性では!?なーんて思ったのであります。

なんとなくではありますが、銭湯&その周辺事業を通して実現したいことが見えてきました;

衣食住のシェアリングエコノミーハブになって、小さなコミュニティの幸福度を上げる

地域の衣(ここはまだピンと来てない)・食・住を皆でシェア・分散処理することで、地域の幸福度を皆で上げていく。
その中心に銭湯があればいいなと思ったのであります。

”増やしたい / 上げたい”か / ”増やそう / 上げよう”と動くかどうかは僕には関係ないけれど、でも、”増やす”余地は生み出せる。そして”増やす”からには幸福度も比例して増えるように頑張る。

銭湯だけでなく、”中”を向く事業はこの方向で進みます。
そしてやっぱりこの言葉が思い浮かんだのでありました、

全ての道は銭湯へ通ず。

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