約10ヶ月ぶりとなった前回の投稿をまとめると;
- まちづくりは「経済」を前輪に、「暮らし・福祉」を後輪に持つ前輪駆動車である
- 前輪は「儲かる観光」と「木」を中心に据えた産業クラスタ化によってまちを引っ張る存在に
- 後輪の暮らし・福祉制度は、地域経済を活性化させてこそ安定・充実した仕組みができる
今回は観光産業についてのお話。
観光は貴重な外貨を稼ぐ産業である。はずが。。
地域が儲からない!
こんなレポートが高山市観光課から出されていたんですが、これによると、観光産業による経済波及効果は約2,000億円(2017-2018年データ)。
観光客が高山に電車/バスで来て、お土産買って、レストラン行って、ホテル泊まって、、、確かにここから広がっていく関連産業の裾野は広く、実際の消費額(1000億円弱)から2倍強の波及効果があるのも何となく理解できます。
が
何故でしょう、そんな実感があまりない。
これ、あくまで各事業者の売上を括っているだけなので、どれだけのお金が地域に残り、地域経済に貢献しているのか?又は、残っているお金はどんなお金か?という視点ではみていません。
観光産業ってインバウンドがどんどん増えてめちゃ盛り上がってる!と世間や表向きな数字は言うけれど、地域経済にその実感は伴っているのか。
BEFOREコロナ期の2019年辺りに初めて感じたこの違和感は、当時十六総研にいらした田代さん(現カンダまちおこし株式会社代表取締役)のレポートによって確信に変わり、世間的に騒がれてるインバウンドで大成功している地方都市 飛騨高山とは全く異なる実情を見てきたのが、コロナ禍含めたこの4年間でした。
どれだけバケツに水が注ぎ込まれても、穴が空いてれば、水は一向に貯まりません。
どれだけ観光客が高山に来てくれたとしても、地域にお金が残らなければ、地域経済はどんどん疲弊していく。これでは前輪として、力強く地域を引っ張る産業として胸を張れる状態ではありません。
地域にお金が残らない ⇆ 地域への関心低下 の 悪循環
2022年10月に2年半を経てようやくインバウンド観光客の受け入れが始まりました。
当初の想定では2023年を通して2019年度比で20-30%戻って来てくれたらラッキー程度に期待してませんでしたが、2023年2月には既に売上ベースで70-80%くらいの回復率です。絶対数でこれだけ来ているのか、競合が減ってうちの宿が選ばれる割合が増えたのか、競合が減った分単価を上げたのが功を奏しているのか、複数の要因があるでしょうけど、当初の想定を上回るスピードで回復しているのは確かです。
あ〜 良かった。これでもう安心だ。またインバンドバブルを謳歌しよう♪
では まずいです。
この3年間特に変わることなくコロナ禍を乗り越えた(?)観光産業は、再び増える一方となるインバウンド観光客を前に、”かつての輝き”を取り戻し、前輪として地域を引っ張る存在になる準備はできてるのでしょうか?
いえ、課題は山積です。
一時的にコインパーキングとなっていた更地ではホテルの建設工事が始まりました。地域の情報誌ではホテル清掃員の求人が日を追うごとに増えています。
地域外資本のホテルが増え、給与を比べ易い労働集約型の職種では人材移動が始まる。
人は剥がされ、地域事業者の体力は奪われていく。旅行支出で一番大きな宿泊を取られることで、さらにバケツに空いた穴は大きくなる・・と。
地域の観光産業への眼差しは益々冷ややかになり、旧高山市内の所謂観光エリアとその他地域の温度差は広がる一方でしょう、、と不安を煽ってみます。
どうしたら地域が儲かる観光産業に変われるのか。
どうしたら高山市全体にも観光産業による恩恵が届き、観光産業が地域にとって意義のある存在となり得るのか。
地域が儲かる・高山市全体が幸せになるために観光産業ができること
やるべきことはとてもシンプルで、観光産業がしっかりと儲かり、地域に残るお金を増やす産業に変わること、そしてそのお金を地域へと還元することだと思っています。
方法として、各事業者の努力ってのは置いといて、仕組として強化すべきこと・導入されるもので一工夫できそうな事について考えてみました。
旅ナカ事業の強化
以前の投稿でも書いていましたが、まず地域としてやるべきことは旅ナカ事業の強化だと思います。
旅ナカは地域に来た人に対して、地域の人が、地域の資源を使って体験サービスを提供するもの。
必然的にお金も地域に残る可能性が高く、これまであまり登場してなかった旅行支出項目なので、新しく発生させられた分 ≒ 地域に残る分と捉えると、やる気出ません?
Uターンして感じたことの一つに、飛騨の人は老若男女問わず良い意味で遊びを知っているということ。
春の山菜に始まり、夏のアウトドア全般(登山、キャンプ、釣り、etc.)、秋のきのこに冬の雪。
本気で遊びを楽しんでいる人達が、世界のどこかの誰かにとっては最適な旅先になれるのだとしたら、彼/彼女らを地域の光として活躍してもらえる舞台を整えることは高山の可能性を更に広げる意味では必要と思います。
そして もう一つ
「地域の無形資産」と 「アナログな交流」もコンテンツとして大きな可能性を秘めていると思っています。これを話し始めると1投稿の長さになってしまうので割愛しますが、これ、実現したいんですよねぇ・・。
支所地域の観光資源整理・役割分担と「高山市」としてのプロモーション強化
「高山市、観光協会」とググってみました。
一般社団法人 飛騨・高山観光コンベンション協会、新平湯温泉観光協会、奥飛騨温泉郷観光協会、福地温泉観光協会、新穂高温泉観光協会、飛騨乗鞍観光協会、平湯温泉観光協会、国府町観光協会、飛騨一之宮観光協会、荘川町まちづくり協議会、一般社団法人 ひだ清見観光協会、飛騨高根観光協会、ひだ桃源郷くぐの観光協会、飛騨あさひ観光協会 (順不同)
多くの協会は独自のウェブサイトを作り込み、良いところですよ!と。
高山市は平成の大合併で9町村が一緒になった日本一大きな市です。合併前に存在していた組織がまだ活動をされているのかな。各地域のアイデンティティを守るためにはその姿形を維持する必要性があるってのは理解できそうなのだけど、、否・・。
ここで改めて持ちたい視点が観光客の動線設計というか、地域の資源を線/面で最適化していくというか。もう少し各地域の位置付けを明確にして、誰に、どこで、どうお金を落としてもらう仕組みを作るか。全体を俯瞰して「高山市」としていかに戦略的に動くか。はたまた飛騨地域/県/隣接県全体を俯瞰した上で、他自治体ともどう連携を深めていくかはもっと議論されて良いと思います。
高山市はインバウンドで成功してきた地方都市ではあるけれど、所詮は9万人弱の地方都市。これからの人口減少時代に、一人勝ちなんてあり得なくて、いかにグレーター高山経済圏を他自治体と形成してより大きな果実を皆で勝ち取り生き残るかって視点はもっともっと持つべき。
限られた予算、限られた人員で無理やりその地域の資産をそれっぽくPRした気になるのではなく、いかに地域の魅力を面で捉えて構成し、発信し、地域に落ちるお金を最大化させるか。ここ、誰かが音頭を取る必要がありそうです。
地域の課題を観光産業から得た資金で解決する
上記の2つは地域が儲かる観光産業へと変わるために必要なことだとしたら、3つ目は地域が幸せになるために観光産業ができること。
そもそも「観光」って、その地域に魅力があるからこそ人が来る訳であって。その魅力ってのは地域の人が長い年月をかけて積み重ねてきた結果であって。と言うことは、住民の存在のお陰で成り立っている観光産業はしっかりと地域に報いるべきであって。
具体的には経済的な恩恵をしっかりと地域にもたらすのは当然ですが、後輪(福祉・暮らし)の改善に対しても観光(経済)で生み出されたお金をもっと役立てることってできるんじゃないの?って思うんです。
福祉・暮らしにまつわる地域の課題って、大体が人手不足/財源不足が一番の課題になります。この財源ってところに、観光産業が何かしら役立てるのではないかと思うんです。
高山市ではこれから宿泊税の議論が本格化していきます。他自治体の例では観光で徴収した税金は更なる観光振興(観光客にとって何らかのメリットのある形)に充てるのが一般的ですが、それってつまりは「観光が目的」になりやしないかと。
じゃなくて、集まったお金を地域の困りごとに充てることで、観光産業が地域の暮らしの改善に寄与するってのはどうだろう。だって、その地の光はその人々が幸せになって初めて放たれるものの筈ですから。
もちろんハードルはあります。
詳しい方に宿泊税の用途についてお話を聞いたところ、①用途を観光振興以外、観光客にとってのメリットとは関係ないところで使うには総務省の説得が難しそう、②観光産業振興に使えるお金が減ることに対して地域の事業者から反発出そう、③他自治体の導入事例がないから行政が動きにくそうと課題はあります。
そう思います。
でも、コロナを経たから今だからこそ、観光産業と地域との新たな関係のあり方を構築すべきだし、小さな地方都市でもインバウンド観光でここまで注目を浴びてきた高山だからこそ、先陣を切って新たな事例を作るってのが素敵だと思うんですよね。
100年先を見据え、「観光」は「目的」から「結果」へと変えること
既存の観光産業を地域にとって意味のある産業に変えることは、インバウンドが回復していく中でこの地域が取り組まなければいけない喫緊の課題です。でも、それも向こう10年くらいを見据えると、です。
個人的な意見ではありますが、”従来の観光”(観光を目的化)を振興する限り、”人が集まる所に外の金が集まる”動きは止められません。地域外資本の参入は宿だけでなく、土産、飲食、関連サービスとなだれこみ、バケツの穴は広がる一方となるでしょう。僅かながらに残る水は清掃を始めとした労働集約な職種となり、どっかのリッチのために上がらない時給仕事をさせられる高山市民が増えていくことでしょう。
「麒麟がくる」はもう終わりましたが、「どうする家康」で再び注目を浴びるかもの岐阜県。
麒麟から何も学ばずに目的/手段として捉えた観光が同じ轍を踏まないかも要チェックです。
で
ここで大事になるのがアプローチの変換です。
”観光産業の振興”はあくまで”儲かる観光”に変えることが重要ではありますが、100年先のまちづくりを見据えた時、大きくまちづくりの方針を変える必要があると考えています。
”観光産業”とは、その大きく舵を切ったまちづくりの「結果」に成立する産業へと位置付けを変えなければいけない。
ではそれは何か。 僕は「木」だと思うし、「木」こそが向こう100年の飛騨地域のまちづくりを考えたとき、前輪として地域経済を牽引する存在になると思っているんです、
というお話はまた今度。
コメント
思いつきの文章。地域経済のことをちゃんとデータに基づいて考えていないですよね。高山市が出している地域経済構造分析ぐらい読んでおけば? 高山市は地方では珍しい、外貨を稼ぐ産業が沢山有るんだよ。化学製品を筆頭に、宿泊業、運輸・郵便、飲食サービス、家具・装備品、卸売業、畜産食料品、小売業が地域経済に貢献している。観光観光って自分がゲストハウスをやっているから我田引水だろ。バケツの穴? 高山市の域内外の収支は毎年100億円の赤字だ。ほとんど通信業の域外移出の額と同じだ。たのむから地域経済構造分析を読んでくれよ。市議会議員になりたいんだろ?
そもそも、宿泊業は働き手がいない問題をどうするんだ? 有効求人倍率から見たら人はいるのに働かない。なぜか? 賃金が安いからだよ。市内で働き手が見付からないし、毎日越境して働きに来る人も有り得ない。賃金が安ければ地域外から働き手を呼べるはずもない。詰んでる。稼げないから人が金を出して人を雇えない、人が雇えないから部屋を稼働させられないから稼げないの循環じゃないか。安い宿ばかり作って宿泊業の奴ら、みんなバカだろ?
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宜しければご確認頂けますと幸いです!
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