知人から聞いたお話。
規模・プレイヤーの違いはあれど、これが”地方創生”の現場で起きてるリアルで、地方が創生するために待ち構える色んな困難と遣る瀬無さとで落ち込んでしまったお話。
とある喫茶店で起こったITによる業務改善のお話
知人の喫茶店は家族(ご両親:70歳手前、娘:僕と同世代)で経営している小さなお店。
そこに東京から知人の遠い親戚がやって来て;
・まだ紙の伝票と旧式レジなんか使ってんの?
知人の遠い親戚(知人の証言から)
・今はi padとairレジ使えばクレカも対応するし、売上管理、帳簿つけるのが楽になるよ。
・原価計算まで入れれば、カフェ経営が見直せて経営が楽になるよ。
・興味あるなら、今度作ってあげるウェブサイトと合わせて手伝ってあげようか?
2人は喫茶店にwifiを導入した数年前からの関係で、定期的な帰省と合わせて、何かしら”業務改善”のお手伝いをしてもらう仲でした。そして今回もいつも通り提案されるがままにお任せした。
後日 imac、ipad x 2、エアレジキット一式が届いた
また後日 80万円の請求書が届いた。
請求書に驚いて知人は僕に連絡をしてきた
何が何だか分からんので、取り敢えず来て、と。
そこで目にしたのは;
- i macのログインに手こずるご両親
- 昔から使うレジに入力した後にipad・airレジでも同じ情報を入力する知人
- XXXの使い方が分からないとの質問に、”ググってください”と書かれた返信メール
- メニュー登録以降、一度も開かれていない原価管理システム
- 交通費・宿泊代(祖父母に孫の顔を見せるための帰省だけれども・・)と合わせて現地サポート代(4万円/日)、サーバ管理料金(2万円/月)と書かれた請求書の内訳
請求金額は120万。補助金を使えば40万円の還付が受けられるとのことで実質80万円の自己負担。
これだけ見ると、誰もが(僕も含めて)こう言うと思う;
- これは悪徳。。遠い親戚に対して何故こんなことが・・
- とは言え、お願いする方もする方だ。。事前に幾らかかるかくらい分からなかったの?
都会の責任
80万円の請求書を送った方と話してみると、彼はこう言いました;
・東京で支援する代金よりもかなり安くしてるんだよ・・
・彼らにやる気がないので、僕も苦労している・・
・もう少しやる気を出してほしい・・
知人の遠い親戚
東京で働いている方の「常識」との比較対象が70歳手前の夫婦が営む喫茶店というのは乱暴だなぁと思いつつ、挙げればきりがない中で特に問題だと思った点を2つ。
OUTCOMEではなく機能
喫茶店と東京の人とは特別に契約を結んでいなかったが(そこも問題。でも遠い親戚同士だしね。。)、本来であればお金の対価として提供されるべきはエアレジ・原価管理システムではなく、エアレジ・原価管理システムをツールとして使いこなして現行業務の生産性を高めることのはず。
アナログなお金の管理をデジタル化することで、伝票処理・帳簿付けの負担が下げられたら・・というのが喫茶店側の期待だった(具体的な効果を期待していたかは不明だが、取り敢えず何かが楽になると思ってた)。一方で東京側の主張は、必要なものは全て導入した。運用の支援もしてるし、僕がやるべきことはやっている、と。
導入して9ヶ月。
相変わらずのレジの2重管理にアナログな伝票処理・帳簿付け。
都会の常識は地方の非常識
彼は言った;
僕は歩み寄っているけれど、リテラシーが低いし、やる気が感じられないし・・
知人の遠い親戚
彼の言うやる気がない姿は、知人のご両親の「何が何だかわからない」姿だった。
地方の家族経営喫茶店にどれほどのITリテラシーを求めるのか。。
(そもそもITリテラシーって何??)
都会の方は喫茶店側が「何が何だかわかってない」状況に気付くことなく”サポート”を続け、一向に変わる様子のない喫茶店側に非があるとの一点張り。(そもそも親戚だけれども・・)
お金を受け取る側の責任として喫茶店側に歩み寄るべきだし、求められるoutcomeを実現するまでコミットするのがサービス提供者の義務だと思うのです
が
必要機能を導入したらそれで終わり。情弱相手のサポートなんて時間取られるだけで利益率下がるじゃん、ってのがビジネスワールドの言い分だとして、その論理を振りかざしている限り、田舎は一向に変わらず、食い物にされ続ける。
情報の非対称性がビジネスになるのは分かるけど、非対称性のレベルが低いのと、そこに漬け込むビジネスはどちらが悪いと言うか品がないって思うんです。
地方側の問題
情弱。
これに尽きるかと。。 でも同時に思うのです
これで片付けてしまって良いのでしょうか、と。
家族で喫茶店を営んでいる人に情弱だ!最新のTECHで生産性をあげよ!って無茶ではないか。。
この喫茶店はこれまでITの力など全く必要としてなかったし、これからも必要としてないでしょう。IT化なんて考えたこともなかったからこそ、遠い親戚の言うままに期待と不安をふわっと抱きながらも任せっきりにした。結果、請求書を受け取ったが、届いた後ですら事態の把握はできていない。喫茶店のご両親曰く;
・いきなり請求書が届いてその額にびっくりした
知人のご両親
・私達は職人ばかりで難しいこと言われてもわからん
・言われるがままに任せていたけど、もう何が何だかよくわからん
頼むからそっとしておいてくれと。
それが彼らの幸せなのだからって思うんです。
家族で細々と喫茶店を営み、常連さんと観光客を安定して捌いていれば、慎ましくも穏やかな生活は送れる。それがIT化の必要性だの経営だの言われたところでピンとこないし、使いこなせないままにオペレーションの負担が増えた結果、そこにあった幸せが奪われるって変です。
じゃー 地方の事業者もITリテラシー高めないとね!ってなります。
言うのは簡単ですが、できますか? って思います。
情弱は競争に負け、取り残され、高齢を理由に廃業に追いやられ、若者が少ない地方は衰退していく流れは仕方ないよね、って言う意見も聞こえます。
なーんかできないのかなーと思うのです。
小さな町の喫茶店では、家族三世代がおやつ食べながらご近所さんと談笑してる姿さえ見られたらそれで良いのではないかと。
地方が創生する前に、生き残るために、すべきこと
この手の問題って飛騨地域に限らず、プレイヤーを町の喫茶店から中小企業・行政と変えれば其処彼処で起こっているはず。
地方はこういう社会の流れにどう抗えるのだろう?と考えてみました。取り敢えず考えついた3つの解決策;
①業界を再編する(小さな事業者多過ぎ)
②バックオフィスは全て外注する。経営と運営を分ける(地方には職人しかいない)
③外部事業者との契約は運用サポートに重きをおく/結果をシェアする(iphone渡されても、電話とSMSしか使わない高齢者多数)
どうやってこの3つを推し進めるかは別にして、ね。
コメント