夫の暴走で地方に引きずられてきた妻に3年を経て起こった変化

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高山市で断トツの購読者数を誇る新聞、高山市民時報に奥様が寄稿した記事が掲載された。

リレー形式で記事をまわすこの企画。前週の記事に書かれた、=次回は中村真由美さん=を見た老若男女、少なくない数の方々から市民時報見たよ!と声かけられ、市民の新しい情報への飽くなき探究心に感心していました。

「外のお金、内のお金」

銭湯のPR機会と捉え、銭湯のことだけを書けと口酸っぱく言うせこい旦那をよそに、地域内でまわすべき暖かいお金の存在について書いた奥様。

この記事を読んで一番驚いたのは僕であり、彼女を知る東京の知人達も、この変貌ぶりにはきっと驚くことでしょう。

ある日突然、「会社辞めてゲストハウスをやるために高山に帰ります」と言い渡したニート旦那を1年以上に渡り扶養し、見知らぬ土地で子を産み・育て、寒く・暗く・とても長い冬を乗り越えてきた彼女が

なんということでしょう。

僕がふにゃっふにゃパリッパリな会社員生活を送っていたとしたら、彼女のそれはまさにバリッバリッ。常に高いレベルでのパフォーマンスが求められる外資系企業でのキャリアを楽しんいた彼女が

なんということでしょう。

最新テクノロジーとブランド品に囲まれて過ごすグローバリズム信仰者で、巨大都市への海外出張をこなし、田舎暮らしなんて毛ほども興味のない都会育ちの彼女が

なんということでしょう。

記事が出たその次の休日。外食に出かけたのは子連れに優しいはま◯し(寿司チェーン)だったという矛盾はさておき、この変化は一考の価値ありです。

この3年間で何が彼女を変えたのか。

ここに都会で働く人々を地方に呼び寄せ、定着させるヒントが隠されているのではないか、と考えたのであります。

弱者の立場

彼女の言うところ、一気に(相対的)弱者の立場になったことをきっかけに、考え方が変わっていったとのこと。

弱者ってとこは色々と意見がありますが、彼女の人生で初めて以下のような立場になったことが大きな転機となったようです;

都会から見ず知らずの地方への移住者
初めてのママ
拠り所だった仕事を奪われ、将来に不安


知り合いゼロ 息抜く時間ゼロ 求められる場所・人ゼロ

このような辛い時期を通して、資本主義的な人格の中に徐々に利他性が芽生えていき、利他性や善意で成り立っている小規模な世界の面白さが徐々にわかっていった、とのこと。

何のこっちゃよく分かりませんが、とくに cup of tea 開業10日前に生まれた娘の子育ては、宿が忙しいとの言い訳から十分にサポートしない旦那を当てにできず、それはそれは相当な負担だったことでしょう。

そんな立場から見えた社会は、大都市東京でひたすら走り続けた会社員人生のそれと否が応でも対比され、それぞれの良し悪しを初めて考える機会になった模様です。

心細くストレスフルな環境の中、春を迎え外に出る機会が増えた時、東京ライフ vs. 地方 with 子供ライフの構図に変化はあったんでしょうか?

安心・安全・肯定・支援

当時の彼女は運転免許を持っていなかった為、取り敢えずベビーカーで街をウロウロしてたら起こること;

地域のジジババからかけられる暖かい声
銭湯に顔出せば無条件に可愛いぃ可愛いぃと
中には涙を流してくださる常連客もいたり。

都会での子育て経験がないので比較はできないけれど、子育てをするうえで「安心」とか「安全」を感じられるのは地方だとは思う。
都会では子連れへのバッシングが問題になったり、公園や児童館などの子連れスポットでの順番待ちが発生したりする中、まずは子の存在を「肯定」してもらえる雰囲気 / 環境があったのは、大きかったと思われます。

さらに、未入園の0歳児でも理由を問わずに気軽に利用できる自治体の一時預かり保育(4時間800円!)の存在は非常に大きかった。実はあまり知られていないらしいこの制度ですが、見つけてきてすぐにヘビーユーザーとなり、育児ロボットから人間に戻ります。



さて 何しようと。

子の存在は認められストレスは軽減されたが、会社にいたころのように、自分の存在が社会に認められ、必要とされる日は再びくるのだろうか。

それとも、過去の栄光として諦めなければいけないのか。。

まだ終わりじゃない かもしれない。

彼女にとって「仕事」は自身の存在価値を確認するために必要で最重要かつ、地方では最難関な問題でした。

たとえ十分な対価が得られるような仕事じゃなくても、自らの能力でもって何かしらの形で社会と繋がる、という機会を切望するように。

一時預かりで自分の時間が作れるようになってきてからは、特技を活かして cup of tea の業務効率化ツールを開発してみたり、中古着物を海外へ販売する EC サイトを作ってみたり、ボランティアでプログラミングの講師をしてみたり。

身近なところで手を動かしながら、少しずつ「社会」との繋がりを取り戻して行く。

この最初の小さなきっかけは、就業状況や家庭状況を問わず託児が利用できる自治体の制度がなければ、確実に踏み出せないものでした。

託児というのは、育児に縛られる全ての女性の可能性を開放する、実に素晴らしい存在であります。

当時彼女が児童館などで会う0〜2歳児ママとの話でよく遭遇したというのが「保育園ニワトリタマゴ問題」。

地方では妊娠をきっかけに退職する女性が非常に多く、産後保育園に預けるためには働かなければいけない、でも仕事を探すには子供を保育園に入れなくてはいけない、ジレンマ。

仕事であろうと趣味であろうと、何か踏み出すきっかけが欲しいと思っても、その逡巡を繰り返しているうちに、自分の可能性を少しずつ否定してしまう、そんな現象が見られるとのこと。

地方経済復興の鍵は乳幼児の託児にあり!というのは彼女の持論。

話が脱線しましたが、そんな小さな歩みを進めるなか、さらに彼女に光を与えた存在が2つ。

図書館

かつて仕事で得られていた学びを代替するものとして、毎週の図書館通いを始めました。

高山市の図書館 + google chromeのエクステンション、その本、図書館にあります。は神であります。

その本、図書館にあります。
amazonで今、見ている本が近所の図書館にあるかどうかが分かります。

高山市図書館は蔵書にない書籍を注文すると、よほどの問題がなければ購入してくださいます。
知識欲求を満たすために彼女がリクエストした本は累計3桁にも届き、そのマニアックな選書は、新刊コーナーに並んでいてもすぐに彼女によるものと分かるものばかり。

何があってもア○ゾンには金を落とすまい、という堅い意思が感じられます。

市税の無駄遣いだっ!との真っ当なご指摘はおいといて、図書館の存在が奥様の満たされることのない知識欲求を満足させ、ご機嫌にし、我が家の平和を維持してくださる貴重なパートナーであることは間違いないです。

仕事は横のつながりから作られる

飛騨地域には世界に冠たる大企業は多くない。
でも、個人事業主も中小企業の数も彼女の予想よりは多く、皆困っていた。

彼女はエンタープライズ IT とデジタルマーケティングのプロであり、東京では主に大企業を支援する仕事をしていたので、地方ではこのスキルや経験が活かせる場所ががないと思い込んでいた。(ぶっちゃけ一次産業か外国人目当ての商売しかないと思われていた。)

しかし、移住して地域経済の輪郭が見えてくるにつれて、規模は違えど、このスキルを適用できる事業者が多いことを知った。

そんな地域の事業者の方が80から90に上げるために頑張る大企業よりも効果が確認しやすく伸び代が大きい分、彼女自身の遣り甲斐につながっている、らしい。

仕事は横の繋がりから見つかるのも地方ならでは。
彼女が何者かを知れば、地元の方からも仕事の相談をちらほらと頂けるようになり、飛騨地域だけで既に4社と取引をしている、らしい。

個人事業主として自分のスキルを売る事、初めて請求書を書く時は躊躇したというが、最近は自信を持ち忙しくサービス提供している姿は、コロナショックによって瀕死の危機にある僕にとってはこの上なく頼もしい存在です。

さて 地方は 何ができるか

さて、奥様のケースを参考に地方への移住者を増やすために、地方都市は何ができるかを考えてみました;

  1. 子育て負担を軽減する保育制度
  2. 子育てママのキャリア支援制度
  3. 柔軟な働き方、オープンに事業機会創出ができる地元企業のマインド変革

辺りになるんでしょうか?

めっちゃ普通だし、皆わかってる そんなこと。

子育てについてはどれだけ言っても言い足りないくらい重要なことだとは思いますが、それを呼水にできるのは大都市で働く人々の通勤圏内のお話。それ以外の地方都市は子育て環境充実!だけでは人を呼び込むことは難しいと思われます。

誰に、どのように、この地に興味を持ってもらい、ここだったら彼/彼女の人生を諦める必要がないと思ってもらえて移住までもってくか。(世の旦那たちを暴走させる?違う。)

結局はいつもここに帰結するんですが、移住政策も一戦術であり、その上の戦略はたまた大ボラをもってこの地の可能性を理解してもらわないと、移住先として選ばれなにくくなっていくのではないでしょうか?

結局は大ボラです、結局は木だと思うんです。 知らんけど。

ここからが今回の本題

そんな奥様は現在、Fida という事業を営んでいます。

合同会社 Fida | 岐阜・高山の企業のWEBマーケティング・DX支援
中小企業の底力をデジタルで引き出すことをミッションに、岐阜・高山から地域の企業をサポートしています

事業内容はBtoBビジネスのマーケティングコンサルティング。

彼女が得意とするデジタル領域のマーケティング知識と、10年に渡って培った BtoB ビジネスの営業活動経験を組み合わせたコンサルティングサービスです。

仕事は横の繋がりから見つかるのが地方ならではとは書きましたが、横でも縦でも斜めでも構いません、お仕事ください。

(旦那の稼ぎが頼りになるには、まだ1年以上を要すため)

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