富裕層向けツーリズムのこれからを考える

まちづくり

政府はインバウンドツーリズムにおいて2つの数値目標を掲げています。

訪日外国人数と消費額。
それぞれ2030年までに6,000万人、15兆円となっていますが、消費額目標達成に向けてキーになるのが富裕層向けツーリズム。

これ、地方はどうやって付き合えば良いのかなと考えてみました。

富裕層向けツーリズムで求められる旅

よく言われてる富裕層向けツーリズムでは①「モノ」より「コト」/パーソナライズされた体験と②Japan Quality信奉がまだ効いてる特定トピック(医療とか)を提供するサービスが求められます。

約127兆円市場!世界の富裕層が自己投資してでも体験したい“旅の形”(山田 理絵)
ラグジュアリー・コンサルタントとして、特別体験や高価値を創造するための秘訣をアドバイスしている山田理絵さん。「人生は旅のスパイス」と語る彼女が、いま急成長している「ハイエンドトラベル」(富裕層旅行)の現場で感じた「発想と創造を生む新しい旅の形」とは。旅行市場だけでなく、モノづくりなどのさまざまな産業がハイエンド市場に進...
中国人の「医療ツーリズム」熱が高まるわけ
「日本に来るたびに、ここのクリニックでアンチエイジングの施術を受けているわ」そう話すのは、中国東北部の大連から来日した、50代の中国人女性、付美玲さん。付さんは東京・銀座にあるクリニックを訪れ、血液を…

国も高山市レベルでも富裕層向けツーリズム対応が重要との認識は広まってますが、なんでやるの?欲しい効果は得られるの?ってことまで考え抜かれてない気がして心配です。
知らんけど、どっかのハイキングコースにプライベートガイド付きで散策し、プライベート温泉入った後に、飛騨牛ステーキを楽しんでもらうって流れでしょうか?

客単価高くても、皆が大事だー!って言ってても、他に成長産業がなかったとしても、忘れてはいけない目指すべきゴールっていかに地域内に残る/循環するお金を増やすかに尽きると思うんです。

そりゃ127兆円の市場規模って言葉には惹かれますけどね、一番大事な富裕層ツーリズムによって地方が本当に潤うかって点が気になります。

やはり観光産業も1ツールですから。

それって地方にメリットあり?

多分ですけど、”富裕層ツーリズム”ってうたってる限りは地域全体が長期にわたりメリットを享受することはないかなと思います。以下、①雇用を増やすか、②地域内で循環するお金の量を増やすか、③ブランディングに繋がるかで考えてみます;

雇用を増やすか

多分増やします。 じゃー良いじゃんってなりますが・・。

ツーリズムが盛り上がることで新たに生まれる職場と考えると、①高級ホテル、②高級レストラン、③専属ガイドが主になりますが、①と②では、オペレーションレベルの雇用を増やします。オペレーションレベルのお仕事はどうしても時給計算ができる仕事となり、そんな仕事は高山では既に不足しています。なので、供給は増えますが需要が足りてない分、外から引っ張って来るしかないと思います、または時給が高い方に人材が流れ、地元事業者は更なる人手不足に・・。

③の専属ガイドは富裕層となると、地方では富裕層の要件を満たせる事業者が多くはないので、都会のエージェントがかっさらうことになりそうです。または都会のエージェントと連携という名の下にオペレーションだけ任されて、高いコミッションを払うという流れになるのかな。

そんなこと言い出したら他の業界だって一緒だし、なんだか暗くなってきました・・。

地域内で循環するお金の量を増やすか

雇用の面では増えるのは確かなので、その意味では地域内で循環するお金は増えると思います。でも個人の時給レベルで、です。本来、富裕層ツーリズムを誘致したい目的はもっと大きなお金を地域内に持ってくるためのはず。
例えばどこかのサーベイでみた訪日旅行の消費額のうち半分前後を占める宿泊に関してはどうでしょう?

高山市では森トラストが古い町並みの一角をまるっと買取、らぐじゅありーほてるの計画が動いてるのか止まってるのかって噂がずっと流れてます。

地方で高級宿泊施設 森トラストは岐阜・高山に外資誘致 - 日本経済新聞
不動産各社が地方で高級宿泊施設の開発に力を入れている。森トラストは2020年にも岐阜県高山市に高級外資ホテルを誘致する。同社は20年までにホテルを現在比4割増の30施設弱に増やす計画で、地方での開発に重点を置く。ヒューリックやNTT都市開発もリゾート地などで高級旅館の開発に注力する。訪日客の増加を背景に、地方でも高級宿...

このホテルができることでのメリットは雇用が増えることだけ。ですが、企画・マーケ、予約管理などの機能は市内に配置されないので、既述のようにオペレーションスタッフの時給分のみが市内に流れ、大事な売上の大半は都会へ流れます。

ブランディングに繋がるか

繋がるでしょう。富裕層でも対応できる観光地、飛騨高山。そして、この街は更なる観光地化へまっしぐら。

やがて消費され尽くして終わります。

やっぱり観光業で盛り上げようってなってる限りは、マスでも富裕層でも同じ結果が待ってるし、長期的にみて地方にメリットがあるようには思えません。

https://www.mori-trust.co.jp/assets/media/20161130.pdf

こんな末路が待ってるなら観光業で食ってくのをやめてみたらどうでしょう?少なくても富裕層の一部とは。

目指してみたい富裕層との付き合い方

ESG投資やらIMPACT INVESTMENTなる言葉がありますが、観光よりもこっちの可能性を探ってみたいです。企業ではなく、超がつく富裕層個人による投資。

宿業やってる僕が言うのも変ですが、従来の”観光”を目指せば目指すほど、資本の論理が資源を蝕んでいくし、地方にはお金が残らない。だったら、直接投資してもらって、長期的なまちづくりに共感し助けてもらった方が良いと考えるのです。

地域の文化保存とか地域の生き残りに寄与しつつ、21世紀に必要なサステナブルな技術・仕組みを自国に展開するために投資してもらう。

多分ポイントは3つあって、①超がつく富裕層個人による投資、②地域への直接投資、③地域の仕組みに対して投資してもらうってところ。

①超がつかないと、金儲け臭がくさいし、②東京通すと謎の中間マージンが取られ、支配下に置かれ、時給で働かされるし、③個人に投資を持ち込まれると私腹を肥やすだけで地域のためにならないので。

散々夢物語を書いておいて、じゃー投資するに値する資源はあるんかいなって話ですが、今の段階ではありません。

が、ここに本気で取り組めば、それが地方都市の生き残りに不可欠なものになるし、新しい”観光資源”になるのではと思うんです。

ま、今は夢物語です。

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